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ブラジル発・遠隔視覚支援(AR)が変える「現場の解像度」 ─Octágoraの「動画記録 × CRM連携」が示す、顧客対応の新設計思想

2026.02.16 COLUMN

#新規事業#テクノロジー

Ⅳ. Octágoraの成長性と次なる進化

1.財務的成功と強固な経営基盤

2022年から2023年にかけて売上を3倍以上に伸ばし、2024年4月には損益分岐点(Break-even)を達成しました。2024年10月時点の月間キャッシュインはR$125k(約365万円)に達するなど、高い収益性を確保しながら自律的に事業を拡大できる、強固な経営基盤を築いています。

2.次なる進化:解決能力を持つ「自律型サポートAI」の構築

安定した財務基盤を背景に、Octágoraは次なるフロンティアとして、AIを活用したサポート体験の高度化に取り組んでいます。同社が見据えているのは、従来の定型的なチャットボットの刷新です。企業が保有するナレッジベースや過去の対応履歴を能動的に参照し、技術的な問題の切り分けや初期診断、さらには具体的な解決手順の提示までを行う「自律型サポート」の構築を目指しています。AIでの解決が困難なケースに限り、人間のオペレーターへとシームレスに引き継がれる設計が特徴です。

もっとも、Octágoraが現在重視しているのは、「完全に人を置き換えるAI」を一足飛びに実装することではありません。AIを「人間の判断を補助し、リスクを早期検知するためのパートナー」と位置付ける、能力拡張の視点を大切にしています。具体的には、以下のような機能がプロダクトの延長線上で実装され始めています。

●音声・ビデオのリアルタイム文字起こし
●音声データに基づくキーワード抽出や感情分析
●特定の単語や声のトーンを検知した「対応優先順位」の自動切り替え
●AIによる自動議事録生成と、レビュー負荷の軽減

AIが定型的な作業を担うことで、人間は共感や高度な判断を要する複雑な課題に集中できるようになります。ガバナンス要請に応える中で蓄積された「良質なデータ」が、そのままAIの学習材料となり、次の進化を支えるエネルギーへと変わっていく。Octágoraは今、その理想的なサイクルを回し始めています。

Ⅴ.まとめと示唆

Octágoraの事例から得られる本質的な示唆は、特定のツールや機能の有無ではなく、「業務を後から振り返れる形で設計できているか」という点に集約されます。

日本企業が直面する人材不足やデータの活用不足は、しばしば「教育コンテンツの不足」や「分析スキルの欠如」といった表層的な問題として語られがちです。しかし、真のボトルネックは、その前段階である「判断と結果が結びついた形で業務が記録されていない」という構造そのものにあります。

「どの案件で、どのような現場を見て、どう判断し、その結果どうなったのか」

この一連のプロセスが可視化されない限り、成功要因や失敗の分岐点を組織で共有することは困難です。その結果、教育は属人的になり、現場の改善は一部の経験者の勘や記憶に頼り続けることになります。

Octágoraの事例は、データ活用や人材育成をあえて「特別な取り組み」にする必要はないことを示唆しています。日常業務の中で、判断のプロセスを自然に記録し、構造化する仕組みを整えること。それこそが、持続的な業務改善と効率的な人材育成につながる第一歩なのです。

それは「高度な分析を始めること」でも「最新のAIを導入すること」でもありません。まず、業務をどの単位で、どの粒度で記録し、資産化していくかという「設計」を見直すことから始まります。ブラジルという厳しい市場環境で磨かれたOctágoraの知見は、日本企業に対して「何を導入すべきか」ではなく、「どこから業務を設計し直すべきか」を問い直すための、極めて具体的な指針を提供しています。

*本記事は、当社の業務提携先であるB Venture Capitalとの共同執筆によるものです。

 

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本社:ブラジル・サンパウロ
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