未来は動き続ける者に開かれるー経営者の思考と行動の力
2025.08.18 INTERVIEW
#ビジネス戦略#事業開発#企業変革#イノベーション
小川 育男
スカイライトコンサルティング株式会社 リードエキスパート
大阪大学基礎工学部生物工学科、同文学部哲学科を卒業後、株式会社電通国際情報サービス(現株式会社電通総研)にて、システムエンジニアとしてITサービスや業務情報系システムの開発、新技術や開発手法の研究開発に従事。スカイライトでは、事業立ち上げや事業企画のコンサルティングを実施しつつ、2007年からシード投資および投資先の事業・経営を支援。2014年頃から、世界各国を拠点にするVCと連携し、ロシア、東南アジア、欧州、アフリカ、中南米等の国外のスタートアップの調査・支援を行っている。
小川:動くというお話が続いていますが、澤田さんは、会社における実証やプロジェクトにどのくらい関与していますか。
澤田氏:自分の興味のあるところには積極的に突っ込んでいきますね。「こんなことをやったら面白いんじゃない?」ということは現場にも提案しますし、あまり躊躇せずに進めているところがありますね。会社全体のことを考える一方で、自分ですごく深く考えるものも持っておいたほうがいいと考えています。
さらに言うと、新しいことをやるときは経営層の後押しと覚悟が重要ですよね。現場からすると、先ほど話にも出たように「コンサルで稼いだ金が溶かされてる」という社員の思いは、口にしないまでも出てくると思います。ただ、それが羽物さんの仕事ですよ。こんな場で、トップの仕事についてのネタバレをしても仕方ないですけれど、やっぱり私も苦労することはあるんですよ。「これをやるべき」というところで、社員から「それは意味があるんですか」と聞かれる。
羽物:意味があるからやっているのは事実です。自分自身、「これをやっていった先にいい未来がある」と思ってやっています。
ファッション特化のAIエージェントを創る
小川:動いていく先として、今後のチャレンジはなんでしょうか。
澤田氏:ご多分に漏れずAIに注目しています。この立場になったからには「あの人が残したこのサービス」といったものは残したいと思っています。今、我々はファッションに特化したAIエージェントを創っているんです。間違いなくAIエージェントの世界が来る。これは大きなゲームチェンジの機会です。
汎用的なAIエージェントは、いずれ、どこかがサービス覇者になると思います。私たちのこれまでの経験として、ECの世界も同様で、サービスが一つに収束していくよねと言われる中で、少なくとも日本においては、服へのこだわりでバーチカルにZOZOは生き残ってきて、ここまで来られたという自信があるので、おそらくAI エージェントの世界でも「めちゃくちゃいいスタイルを提案してくれるエージェント」というのを創れるはずだと思っています。膨大なデータは既に持っていますから、試行錯誤を日々繰り返しながらAI エージェントの精度を高めています。
小川:なるほど。
澤田氏:4月には、欧米を中心に検索とECの間のサービスをやっている、LYSTというイギリスの会社を買収しました。AIやデータに強みを持つ会社なので、技術・ノウハウの相互活用を含めうまく連携しシナジーを生んで、ゆくゆくはZOZOがAIエージェントで世界を席巻するところまでいきたいと考えています。
小川:羽物さんはいかがですか。
羽物:国内では、コンサルティング業にさらにしっかりと取り組み、伸長させたいと考えています。少し変化があるのが、これまでは東京中心だったのですが、少し地方を向いたほうがいいのかなと。東北に支社ができて何年か経っていますが、それだけでなく最近は別府市と共同で実施するベンチャー支援プログラムをきっかけに新規投資を行いました。九州リーグで活動している地域密着型のサッカークラブの支援をしたり、出雲市のベンチャーと連携したり。その中には、地方と海外で連携しているビジネスもあり、そういった部分にも目を向けたコンサルティングサービスも広げていきたいと考えています。
マクロに視点を移すと、アフリカや中南米、東南アジアなどは人口が伸びているので、そういったエリアでのビジネス――これは狭い意味でのコンサルティングだけではなくて、他の事業の形になるかもしれませんが、やっていくべきだと思うし、その点で、日本発のグローバルなコンサルティングファームとしてはまだまだ道は一歩目で、先は長くあります。そう考えると私の寿命では足りないんじゃないかと思っているところです。
小川:動いて挑戦する重要性は、会場にいるコンサルタントにも改めて響いたと思います。本日は、ありがとうございました。