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未来は動き続ける者に開かれるー経営者の思考と行動の力

2025.08.18 INTERVIEW

#ビジネス戦略#事業開発#企業変革#イノベーション

コンサルタントからコンサル会社経営へ

小川:羽物さんも同じくコンサルタントを経て、今、経営を行っています。今日のこのイベントの冒頭で、「会社の代表にはなりたくなかった」と言っていましたが。

羽物:クライアントに直接接しながら、達成感を味わえるコンサルタントという仕事の楽しさを存分に味わっていたし、時代が変わっていく中でまだまだ味わいたかったので、最初は正直そうでした(笑)。

仲間とともにスカイライトを設立するときに、代表という立場になったことで、マインドを変える必要がありました。自分が直接クライアントにコンサルティングを行うことよりも、会社のメンバーが良い仕事をして輝くようにする。それが会社の代表としての優先ミッションだと考えました。25年経った今では、やりがいを感じながら活躍するコンサルタントが増え、クライアントからも高い評価を得ている。これは会社を経営してきた大きな成果だと思っています。

羽物 俊樹

スカイライトコンサルティング株式会社 代表取締役

1967年2月21日生まれ、東京都出身。慶應義塾大学理工学研究科電気工学専攻修了。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)を経て、2000年に仲間とともにスカイライトコンサルティング株式会社を設立。代表に就任。設立以降、プロフェッショナルサービスを提供するスカイライトの経営リーダーを務めている。スカイライトでは、経営コンサルティングと並行して、ベンチャー投資や自社新規事業をグローバルに展開し、顧客企業に顕在化した経営課題の解決のみならず、広くイノベーションの実現に向けて取り組んでいる。

日本企業の正解を追求したい

小川:澤田さんは、創業者である前澤友作氏から社長の立場を引き継ぐ形で就任されましたが、「これを残したい」「自分でこれを作りたい」といったビジョンや目標はありましたか。

澤田氏:残したいと思ったのは「人材」ですね。すごく前向きなメンバーが集まっていて、言葉自体は好きじゃないのですが、「家族的」な雰囲気なんですよ。いい意味で、古き良き昭和の企業みたいな一体感のある企業体質で、「チームで頑張ろうぜ」というパワーを今も信じています。今どきは、評価制度をきめ細かくして、職能レベルごとに運用するのが一般的になってきていますが、もう少しふんわりとしたアプローチがあってもいいと感じています。ただ、「結果は出しまっせ!」というような。それが日本の組織としては正解なのではないかという気がしているんですよね。そのためには自分の組織が成長し続けなければならないので、成長を続けることによって、「この企業文化は実はありかも」というところまで持っていきたいと思っています。

一方で変えたのは、コミュニケーションの方法です。創業者が経営の指針を示すのはベンチャーでは当然のことですが、私が就任してからは、情報を共有する範囲を大幅に広げました。

スカイライトに入社したときも、同様のことを感じました。経営会議やアサイン会議などみんなで集まってやっていましたよね。「この営業がうまくいっていないです」「この案件が取れました!」といった情報が隠されることなく、全員で共有できていました。

羽物:それは今も続けていることで、情報はなるべくオープンにしています。若い同年代が集まってスタートした会社なので、上層部で決めて落とすというのは組織の文化として合わないし、リスクを負って新しい会社の立ち上げに参加したメンバーが「この船、もしかして沈むんじゃないの?」と不安に思わないようにしないといけないと思っていました。経営会議に誰でも参加できますよ、月次で全社会議をやりますよ、というのはずっと続けています。あと、そもそもオープンでいろいろ言い合えるほうが好みに合っているというのもあります。

澤田氏:そうですよね。そのほうが、コミュニケーションコストが少なくて済むんですよね。

羽物:私ももっとも大事にしているのは、やはり人で、コンサルティング業は人がビジネスをするものなので、それぞれの社員がやりがいを持って仕事しているか、輝いているか、そして成長しているのか、ということを意識しています。それに加えて、自分の立場で意識しているのは、私自身が楽しむということです。トップがつまらなそうな雰囲気を出していたら、「つまらない会社」とみんな思っちゃうじゃないですか。ただ、スカイライトが現在行っているスポーツや投資、海外事業に対して「羽物さんが好きだからやってんでしょ」と思っている社員もいるのだろうなとは想像しています。

会場:(苦笑)

澤田氏:フォローするわけではないのですが、「動くこと」ってやっぱりすごく大事なんです!
物理的な移動もそうですし、想像もしていなかったところに手を出すこともそう。そういうことが運を引き込むというのは実感としてあります。たとえば、スカイライトのブラジルでのサッカー事業もおそらく、サッカーの先に何かがあって、きっと、それが舞い込んでくることもあるんですよね。

羽物:そうですね、動いたおかげで次、動いたおかげで次と、広がっていきます。ベンチャー投資も一つ始めたら次の機会が、それを始めたら次の挑戦が、という風に。海外の事業もそうやって広がっていっています。

澤田氏:動けば動くほど、転がっているうちに。

羽物:人間関係資本という、一緒にできる人の関係も増えていっているし、その中で、スカイライトのメンバーが重要なポジションを務めることも起こってくるので、ますます広がっていきますね。

澤田氏:トップとしての「行動」が非常に重要で、同時に「考えること」も大事です。考えすぎて結局行動に移せないのはよくないので、その「中間」を見極めるようにしています。思考ベースで非常に強い岩盤を積み上げ、そこではじめて、ジャンプアップすること、新しい挑戦をすることが可能になると思っています。

世間では、「経営者とは?」と聞かれたり、「経営とは……」と話す人がいたりしますけれど、それぞれにスタイルがあって、羽物さんは羽物さんのスタイルですし、私には私のスタイルがあって、それにフィットする形でやるのが一番健全だと考えています。

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