未来は動き続ける者に開かれるー経営者の思考と行動の力
2025.08.18 INTERVIEW
#ビジネス戦略#事業開発#企業変革#イノベーション

スカイライトコンサルティングは、今年、設立25周年を迎えました。記念企画の一環として、かつて当社に所属し、現在は株式会社ZOZOの代表取締役社長兼CEOとして活躍されている澤田宏太郎氏を当社社員170名が集まる全社イベントにお迎えし、代表取締役の羽物俊樹との特別対談を実施いたしました。
モデレーターは、スカイライトコンサルティングの小川育男が務めました。
本記事は、この対談の内容を基に構成しております。(対談日:2025年4月25日)
「好き」がもたらす力の大きさ
小川:早速ですが、御社ZOZOのお話から伺えればと思います。澤田さんがZOZO(当時、株式会社スタートトゥデイコンサルティング)に移られたときは御社にとってどのような時期だったのでしょうか。
澤田氏:それ以前からコンサルタントとして支援していたわけですが、成長は明らかでした。当時の物流拠点は、オフィスビルの一角にある小さなスぺースだったんです。ちょうどこの会場の広さくらいですね。そこから洋服を発送していて、日々、その数が増えていくのが、リアルに体感として分かりました。数字にも明確に表れていたので、「これは絶対伸びていく!」という確信が持てたのを覚えています。当事者だからこそ得られる、強い手応えでしたね。
小川:社員の方々のモチベーションも相当に高かったそうですね。
澤田氏:そうですね。それは今も変わりません。
これは事業会社の根底を成すものだと、今も思っています。『それが好きである』というのは、ものすごいパワーなんです。たとえば今は物流拠点も、当時の何百倍という大きさになりましたけれど、規模が大きくなると業務が複雑化してきて、いわゆる「業務の整流化」や「BPR」といった取り組みが重要視されます。しかし、業務改善に十分に取り組んだところで、コストは最大でも10%削れるかどうか。一方で、物流拠点で働いている人たちが「服が好き」というだけで、効率は全く変わるんですよ。服に興味のない担当者がピッキングをするよりも、服好きの社員が「これ、最近売れてるんだよね!」とか言いながらスピード感とワクワク感を持ってピッキングをするほうが、業務改善などよりはるかに効率が上がるという確信を持っています。
小川:商品画像も自分たちで撮影されていましたよね。
澤田氏:メディアを作っている感覚ですよね。アイテムのサイズを測って、商品がよりよく見えるように撮影をして、買う人の気持ちになりながら売ることを楽しめるのは大きいですね。
羽物:今日の服もZOZOTOWNで購入したんですか?
澤田氏:そうですね(笑)。
小川:若い方たちには分かりづらいところがあると思うんですけれど、2000年代はまだ、ネットで服を買うことのハードルが高かった時代ですね。
澤田氏:ECが当たり前になった今でも、社員のパワーは変わりません。先日も社員総会で「ファッションモンスターを決めよう」という企画があったのですが、ここでお見せできないのが本当に残念なくらい、最高に盛り上がりました。個性的なファッション大集合で、すごく面白かったです。
澤田 宏太郎 氏
株式会社ZOZO 代表取締役社長兼CEO
1970年12月15日生まれ、神奈川県出身。早稲田大学理工学部を卒業後、株式会社 NTTデータに新卒入社。その後、株式会社NTTデータ経営研究所、スカイライト コンサルティング株式会社を経て、2008年5月に株式会社スタートトゥデイコンサルティング(2013年8月に株式会社ZOZOに吸収合併)を設立し、代表取締役に就任。2013年6月に株式会社スタートトゥデイ(現 株式会社ZOZO)取締役に就任し、2019年9月から現職。2022年8月、株式会社ZOZO NEXTの代表取締役CEOに就任(現任)。趣味は釣り。
経営者は四六時中考えている。これに対峙するコンサルタントは何をすべきなのか
澤田氏:今日この会場にいるコンサルタントの皆さんに「仕事の対象が好きかどうか」を当てはめるのは少し違うかもしれません。ただ、クライアントのビジネスにどれだけ憑依できるかが重要というのは、コンサルと事業会社の両方を経験してきた私だからこそ言えることだと思います。どれほど尽力しても、クライアント組織の内部の人間を超えることはなかなか難しいことですが、「この商品を本当に売りたい」「これを作りたい」「業務改善をしたい」というように、どこまで深くクライアント側に入っていけるか、クライアントの気持ちのレベルまで入り込めるかどうかでパフォーマンスは変わってくると思います。
小川:僕も2004年にスカイライトに入ったときにはコンサル経験はなかったのですが、上司には常々「クライアント以上にクライアントのことを考えているか、クライアントが考えていないことまで自分たちが時間をかけて考えるのだ」ということを言われましたね。
澤田氏:クライアントは上の層に行けば行くほど、ビジネスのことを四六時中考えていますからね。私もこの立場になってずーーーっと考えているんですよ。そうやって考え続けていると、思考の深化、つまり「深み」が増していくのを自覚できます。そこに、コンサルタントとして対峙するには、時間と気持ちを費やすことが必要だと感じます。
小川:話を少し遡らせていただきます。澤田さんがスカイライトに入社したころのスカイライトの印象はどんな感じだったんでしょう。
澤田氏:当時、転職活動は外資系企業を中心に行っていました。知的探求心が強いほうなので、外資の雰囲気にも惹かれつつ、内資であるスカイライトの面接を受けたときは、何と言えばいいのか、めちゃくちゃいい人たち、という印象でしたね。
羽物:それ、誉め言葉ですよね?
澤田氏:誉め言葉です。とにかく、採用面接を受けている私の内面とスキルを真剣に見ようとしてくれている姿勢を感じたことが印象に残っていますね。
羽物:採用については、スカイライトに入って伸びる人を採りたいと考えています。未経験者だったら当然伸びしろしかないわけですけれど、マネジャーだとしても、そこから伸びるかが大事です。澤田さんもマネジャーとして採用しましたが、まだまだ大いに学習しながら、チャレンジして伸びていこうという意識があったと思っています。
小川:スカイライトでのコンサルタントを経て、今は経営者を務められているわけですが、良かったこと、あるいは弊害などはありますか。
澤田氏:コンサルタントの経験は、いいことしかないですね。今の時代は新卒の方々にもコンサルティング会社が人気だと聞きますけれど、皆さんその辺は理解されていると感じます。コンサルティング会社の良さは「動きがある」ことです。案件によってクライアントも変わりますし、自分としては得意領域をいくつか持てますし、スキルという面で、最初から事業会社に入るのとは圧倒的に違うので、それは良かったと思います。
さらに、私個人の話をすると、物流と小売とITのコンサルティングを得意としていたのですが、その3つは結局ECにつながるんですよね。偶然のことなんですが。スタートトゥデイがEC事業を始めたときも、手に取るように様々なことが分かりましたし、お客様からも信頼され、私としてはいいことしかありませんでした。
スカイライトでは様々なことを経験するチャンスがあると思うので、どんどんトライしていただければと思います。その先で、事業会社に行かれるかどうかは人それぞれだと思いますが、まずは様々な経験をして欲しいですね。
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